授業形式についての考察(継続中)

新型コロナウイルスの影響により、学校の授業のリモート化が混乱を伴いながら大きく進みました。リモート化といっても様々な形式が存在しており、学生たちの通信環境によってそれぞれの対応が求められます。ここではその内容を整理し、リモート形式や対面形式についてそれぞれの良し悪しを踏まえながら、今後(アフターコロナ)の授業についての考察をしていきたいと思います。

まず、リモート形式の授業についてです。

受け手の通信環境によって次の2つに分けられます。

  1. リアルタイム形式
  2. オンデマンド形式

リアルタイム形式はPCとzoomなどのツールを使用し、動画や音声で授業を遠隔に行う形式の授業です。今までの対面授業をそのまま移行しやすく、受け手にとっては視覚上、先生との距離が近くなります。また、授業で表示されるスライドが見やすい点もあります。その反面、画面の前で受講しているのか、話に対してどれくらい理解できているかという反応がわかりにくく一方的なものになりがちです。教える側にとっては不安を抱えながら行うことになります。

ただし、リアルタイム形式単独で成立することは現実的に多くはありません。なぜなら、リアルタイム形式で受講できる通信環境を全ての学生において確保できないからです。これは学生に委ねるところが大きく、その環境が公平であるかどうかを検証し確証がもてて初めて成立します。

そこで、リアルタイム形式とオンデマンド形式を組み合わせて行う対応が求められます。2つの形式を同時に行うことになるので、負荷は大きいです。私はリアルタイム形式を行いながらその授業を録画し、動画を配信することでオンデマンド対応をしています。

次に、オンデマンド形式についてです。こちらでは事前に用意した動画や資料を配信し、学生は都合のいい時間で受講します。一方的になるので、学生にはレポートや小テスト等に取り組み、提出してもらいます。今ではオンデマンド用の動画資料を時間をかけて制作し配信を行うことができますが、新型コロナの広がりが強かった2020年は、オンデマンド形式に一斉に切り替わりました。その当時は、資料や課題を与えてレポートを提出する形式が多く、提出期日集中したり同じような形式の課題が続いたことにより、学生への負荷が非常に大きくなったのが問題となっていました。学生は1人暮らしが多く、外出をしにくい状況の中で1人で沢山の課題に取り組まなければならない状況でした。

そして、対面形式についてです。

ワクチン接種や予防対策によって新型コロナウイルス感染が落ち着き、学校に対面授業が戻ってきました。2022年3月22日に文科省から全国の大学に対面授業を適切に行うよう通知を出したことも大きな要因です。通知では、大学での教育について、「人格の完成を目指す上で、対面による学生同士や教職員との人的な交流も重要な要素」とし、 切磋琢磨 できる環境をつくることの大切さを強調しています。ただし、全面的に対面授業に移行できないところもあります。

感染リスクがゼロではない状況ではあるのでリモート対応を希望される場合は、オンライン形式やオンデマンド形式を併用することで対応をしています。これをブレンドデッド形式やハイフレックス形式といいます。対面授業をしながら同時にzoomなどのツールを使用しリアルタイム配信を行うことや、授業を動画撮影しオンデマンド形式としてリモートを行なっています。この場合は対面授業を撮影することになるので、カメラ位置や音声レベルの確認が必要になり、作業に大きな負荷がかかります。リアルタイムで配信する場合は教室で受講している学生の状況を確認しながら、リモート形式の学生にも気を配り、配信に問題がないかを定期的に確認することも求められます。また、オンデマンドでのブレンデッド形式の場合は対面授業とのギャップが大きくなります。対面授業とオンデマンドの良し悪しがはっきりと分かれ、結果として学びに大きな差が生まれると考えます。

では本題にうつります。

はたして、どの授業形式がいいのか?

教育機関では新型コロナウイルスの影響が強かった2020年あたりにリモート対応を中心にした授業形式に関する定義や進め方を早急に検討しました。ここでは、大阪大学 全学教育推進機構のHPを参考にし、形式の特徴をまとめた表をご紹介します。

制作:大阪大学 全学教育推進機構

また、それぞれの組み合わせを整理してみました。

※授業形式の用語は組織や研究者によって異なる場合があります。

形式としては対面、リモート、ブレンデッドと3つあり、すべてのコマを同じ形式で行うか、混合して行うのかという選択肢があります。それぞれの形式には良し悪しがあり、一概にベストな形式を選択することはたいへん難しいと思います。また指導内容や目的によってそれらを組み合わせていく必要性が求められていくことを考えると、それらを効果的に行えるのであればやらない理由はないです。

しかし、問題点もあります。

ひとつは、複雑化をすることによって、授業形式や課題形式、提出形式がバラバラになっていき、学生たちに大きな負荷がかかることです。選択肢が広がり、きめ細やかな対応が期待されがちですが、程度を考える必要があります。また、授業を運営する立場にも大きな負荷がかかります。

もうひとつは、リモート化による学びの質についてです。新型コロナウイルス感染拡散前までは対面授業ありきで補完としてリモート形式を活用する場面もありましたが、リモート形式のみで成立させなければならない状況がここ数年ありました。先生の話を聞くことが多くを占めている講義形式の授業については、リモートの継続を希望する学生の声も少なくありません。学生にとっては、授業を受けやすいという利点があります。そこでリモートへの変化による学びの質はどうなのか?ということと、本来の学びの目標、目的はどうなのか?を今の時点で再確認する必要があると思います。

ということで、これらはそもそも授業や学びに求められるものは何か?そして学校の存在価値は何か?まで広げて考察していくべきと考えます。

つづく

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です